中国の非正常出願と出願番号付与

2021年9月25日
アジア特許情報研究会:伊藤徹男

1.はじめに

前報で、中国におけるいわゆるコピー出願などの非正常出願について紹介しました1)。そして、その非正常出願を取り締まるためにいくつかの通知2) や政令3) が今年になってからも公布されています。
「コピー出願などの非正常出願をした者は公開になる前に自発取下げすれば懲罰を課さない」とのことから2018年末以降、大量の非正常出願が取下げられた、とも言われています。

「中国特許情報の実態」の「4.中国特許の出願番号密度(収録率)」でも紹介しましたように4) 出願番号の欠落から公開前に自発取下げされたものが推測できます。もちろん、必ずしも「出願番号の欠落=自発取下げ」だけではなく、その数は少ないとは思いますが、出願書類の方式不備などのOAに対し、無回答のまま放置して「見做し取下げ」になったようなものも含まれるでしょう。

そこで再度、中国特許(実案も含む)の出願番号付与について紹介し、非正常出願との関係を確認したいと思います。

2.中国特許情報の出願密度(収録率)

「データベースで検索した特定年の出願総件数をその年の出願番号最大値で除した値を『出願番号密度』と定義」してデータベースの収録率を算出していますが1)、その生データを表1(内国出願特許)と表2(内国実用新案)に示しました。

各セルの出願数は、取下げなどがなければ10000件となりますが、データベースを検索して求めた件数は、例えば、CN20051000%(AN=CN200510000001~CN200510009999)の場合、8548件です。つまり、1452件は自発取下げ等、何らかの都合で公開されなかったものです。この10000件だけを見てみるとその出願密度は85.48%となります。

そして、2005年に公開された全件では「125746件」公開されており、最大出願番号は「CN200510200907」ですので、公開全件を最大出願番号数「200907」で除するとその出願密度は62.59%となります。しかし、CN20051020%代の742件は、CN20051014%~CN20051019%まで約60000件もジャンプして付与されていますので最大出願番号数「200907」から60000を引いて補正し、改めて出願密度を求めるとおよそ89%ということになります。

また、PCTからの移行特許出願数を表3に、実案数を表4に示した。表3を見て明らかなようにPCTからの移行特許については、その出願密度は99%以上であり、主として出願取下げなどによる欠落は内国出願だけの問題であることも分かります。PCTからの移行実案の出願密度については件数が少なく議論できません。

表1、表2のような内国出願番号のジャンプは2010年に顕著で、表5(内国特許)、表6(内国実案)に示すように他の年度に比べてもさらにイレギュラーとなっています。具体的には、表5(内国特許)におけるCN20101050%へのジャンプは、2010年9月の末から出現し始め、2010年10月にはそのジャンプがほぼ完了しています。この要因は、「電子出願が2004年に開始された後、2010年10月1日に改めて電子出願の普及が局令として発布され5) 、出願から権利失効までの全手続を電子化」のための新システムへの切り替えの過程において、その新システムの運用の都合で生じたものではないかと北京銀龍事務所の雙田先生からコメントをいただきました。

3.非正常出願による「出願取下げ」の類推

「2018年末以降、大量の非正常出願が取下げられたらしい」ということを確認するために上記出願密度の観点から2018年~2020年の特許出願番号数を確認した(表7)。最近の特許出願数は2015年以降、100万件を超えているため、ここでは各セル10万件当たりの出願数で確認しました。

その結果、2018年以降の出願数が2017年以前の出願数と比べて顕著に少なくなっている状況は確認できませんでした。2020年では2019年以前より若干少ない収録数となっていますが、2020年に出願され、2021年9月現在、公開となっているものは(6か月あるいは1年以内の早期公開特許の割合が増えているとは言え)未公開分もあり、データベースにも搭載されていないものを考慮すると、2019年以前の出願公開数の各セルと同様、90,000件前後)になるものと思われます。

したがって、最近の出願番号数の検証からは「非正常出願による出願取下げ」を確認できませんでした。

4.出願年を跨ぐ出願番号について

次いで、このように見てきた出願番号ですが、出願番号を跨ぐ出願日の公報が存在することが確認できたので(図1および図2)、以下のようにその存在数を確認しました(表8、表9)。
①出願番号年以前の出願日
例えば、2015年出願番号特許の出願日が2014年以前となっている例(図1)
②出願番号年と同じ出願日
③出願番号年翌年出願日
例えば、2015年出願番号特許の出願日が2016年となっている例(図2)
④出願番号年翌々年出願日
例えば、2015年出願番号特許の出願日が2017年となっている例

図1.2015年出願番号特許の出願日が2013年のもの

図2.2015年出願番号特許の出願日が2016年のもの

上記データを子細に検証してみると①のほとんどは(全数確認した訳ではないので)分割案件であった。
また、③および④についての理由はわからなかったが、北京銀龍事務所の雙田先生からの情報によると「出願時に出願番号が付与されたが、その後の初歩審査で出願日の認定条件を満たしておらず、書類の再提出が行われ、その再提出日が出願日となり、出願番号の翌年が出願日になった」ものではないかとコメントいただきました。
「そんなことがあるの?」と戸惑うばかりでしたが、実務に携わっておられる中国在住の専利事務所ならではの情報と感謝しております。
おかげで出願年を跨ぐ出願番号が付与されている理由が理解できました。

まだまだ謎多き中国特許情報ですが、1つずつ謎を解き明かしていきたいと思っています。

5.参照文献

1)検索Tips「中国の非正常出願について」(2021/9/15)
https://sasiapi.org/2021/09/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%ae%e9%9d%9e%e6%ad%a3%e5%b8%b8%e5%87%ba%e9%a1%98%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/

2)「専利出願行為の更なる厳格な規範化に関する国家知識産権局の通知」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20210127.pdf

3)「国家知识产权局发布《关于规范申请专利行为的办法》的公告」(第411号)
https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/3/12/art_74_157677.html

4)検索Tips「中国特許情報の実態」(2021/2/21)
https://sasiapi.org/2021/02/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e7%89%b9%e8%a8%b1%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%ae%9f%e6%85%8b/

5)关于电子专利申请的规定:局令第35号(2004)
http://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/flfggz/flfggzbmgz/202101/t20210122_143642.html

关于专利电子申请的规定:局令第57号(2010/8)・・2004年局令を徹底するため再発令
http://www.gov.cn/gongbao/content/2010/content_1758226.htm

关于专利电子申请的规定(2010)
https://baike.baidu.com/item/%E5%85%B3%E4%BA%8E%E4%B8%93%E5%88%A9%E7%94%B5%E5%AD%90%E7%94%B3%E8%AF%B7%E7%9A%84%E8%A7%84%E5%AE%9A/607435?fr=aladdin

关于专利电子申请的规定国知局令第57号2010年
https://18ben.com/index/tiaomuview/qdid/2094/id/293423

「国知局令第35号2004年」⇒「国知局令第57号2010年」に置き換える旨の通知

以上