中国の非正常出願について

2021年9月15日
アジア特許情報研究会:伊藤徹男

1.はじめに

今年(2021年)になってから、非正常出願(いわゆるコピー出願だけには留まらないが)に対する中国特許庁からの対応が矢継ぎ早に出ているので、以前からこの問題に関心を持って情報収集し、セミナーでもコラム的に紹介してきた本件問題について改めて紹介したい。

先行出願と同様の、場合によってはまったく同一の内容を出願人、発明者だけが異なる出願(コピー出願)については、2012年に特許と実用新案の同日出願(以下、特実同日出願)を検証中、たまたま見つけたものですが、当時は「こんなものもあり?」と驚くと共に、特許の場合には審査段階で拒絶されるだろうし、実案で登録となっても権利行使はできないこのようなコピー出願でも維持年金を払わなければならないし、どんなメリットがあるのだろうと思いました。

中国では特定の条件の出願人には、出願費用、審査請求費用(特許)、さらには登録後の維持年金が3年間も補助されるという出願助成制度があることに気がつき、「なるほど!」と思い直しました。明細書を作成(コピー)して体裁を整え、出願するという手間を除けば「特許出願中(または実案登録済)」などと謳えるメリットがあるのかもしれません。
当該特許(実案)を実施した場合には、先願出願人から権利侵害で訴えられますが、「我が社ではこんなに特許や実案を出願していますよ!」とアピールできるのかもしれません。政府がやっきになっている出願数の増加に寄与できる、と考えていたかもしれません。

出願人、発明者とも同一の特実同日出願や先願の分割出願、先願の改良発明(改良発明などは発明者が異なることもあります)なども「コピー出願」と同様に、先願とほぼ同一の文言で構成されます。また、改良発明ではなく出願人が同一で発明者などが異なる出願が、場合によっては他社からの出願も技術内容の表現上先願と似た表現で出願されることがあります。
さらに、ほぼ同一の内容の出願は、特実同日出願や改良発明以外にも自社または他社から先後願関係の出願にも見られます。5月連休前に出願した特許が他社から同様の内容で連休後に出願されたことを知り(公開時点で判明)、危うくセーフとなったという研究者時代の経験もあります。

2.非正常出願(不浄出願)とその取り締まり

非正常出願が現れることとなった要因には出願助成制度が影響していることは中国特許庁も認めているところです。そこでその出願助成制度について経緯を追って概観してみることにします。ここでは非正常出願に関連する法制度(政令や局令を含む)のみを列挙し、ハイテク企業認定による法人税の減免や発明報奨制度などその他の保護政策は割愛します。

中国では、つい最近まで出願すれば(出願の方式さえ整っていれば)出願助成金が貰えたり、審査請求費用が免除されたり、登録になればさらに維持年金(当初は3年分であった)が助成されるなど、専利(特許、実用新案、意匠)出願に対して国をあげて助成することで出願することになじんでもらおうとする政策が打ち出されました。さらにはその国の助成と重複する形で各省や各市からも助成金が受け取れることになったのです。

これらの助成は「誰でも」という訳ではなく、以下の特定の条件を満たす中小企業、個人等となっています。
助成を享受できるのは(出願助成対象)は当初、
①前年の平均月収が3,500元(年間42,000元)未満の個人
②前年に課税所得が30万元未満の企業
③公的機関、社会団体、非営利の科学研究機関
でしたが、2019年には以下のように条件が少し厳しくなりました。
①前年の平均月収が5,000元(年間60,000元)未満の個人
②前年に課税所得が30万元未満の企業

1)関連する政令、局令、通達

以下に時系列的に関連する政令、局令を、そして発布することとなった要旨のみを簡単に挙げました。日本語に翻訳された資料がある場合にはその日本語情報と中国語、日本語情報が見つけられなかった場合には中国語のみ、となっていることを了解ください。

(1) 1992年8月18日「专利申请费用减缓办法」 国家知识产权局令

http://tradeinservices.mofcom.gov.cn/article/zhengce/flfg/201710/191.html

・出願費用、審査請求費、登録後の年金費用(特許権が付与された年から3年以内の維持年金)、覆審費用などが免除
・出願人または特許権者が個人である場合、出願料の80%
・出願人または特許権者が法人である場合、出願料の60%。
・複数の事業体が共同で特許を申請する場合、特許料は減額されない。

(2)2006年10月12日「专利费用减缓办法」

https://www.cnipa.gov.cn/art/2006/10/12/art_526_145958.html
http://www.gov.cn/ziliao/flfg/2006-11/06/content_433510.htm
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/2007041244719582.pdf

・出願人または特許権者が個人である場合、出願料の85%、発明特許出願の審査料および年会費、ならびに発明の維持費および再審査料の80%の支払いを延期するよう要求することができる。
・出願人または特許権者が法人である場合、出願料の70%、発明特許出願の審査料および年会費、ならびに維持費および再審査料の60%の支払いを延期するよう要求することができる。

(3)2013年12月25日「専利出願の質を一段と向上させる若干意見」

https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/ipnews/2013/gov/3c50b2d7791d64e4.html
出願の量から質への転換声明

(4)2016年7月27日「专利收费减缴办法」2016年9月1日施行

http://www.gov.cn/xinwen/2016-08/04/content_5097534.htm

登録後の年金費用(特許権が付与された年から3年以内の維持年金補助が6年に延長された。
助成を享受できるのは
・前年の平均月収が3,500元(年間42,000元)未満の個人
・前年に課税所得が30万元未満の企業
・公的機関、社会団体、非営利の科学研究機関

(5)2016年12月6日「専利出願行為の適正化に関する若干の規定の改正草案(意見募集稿)」に関する説明

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20161206_2.pdf

「専利出願行為の適正化に関する若干の規定の改正草案(意見募集稿)」改正箇所対照表
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20161206_3.pdf

異常専利出願行為の方式の追加
異常専利出願行為に対する処理措置の強化

(6)2017年2月28日「知识产权局关于修改《关于规范专利申请行为的若干规定》的决定」

http://www.gov.cn/gongbao/content/2017/content_5222952.htm

「専利出願行為の適正化に関する若干の規定」の第3条以下を修正

(7)2017年4月1日「关于规范专利申请行为的若干规定」(2017)(第75号)

https://www.cnipa.gov.cn/art/2017/3/2/art_74_27619.html

「専利出願行為の規範化に関する若干の規定」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20170401_all.pdf

名称を「関於規範専利申請行為的若干規定」から「関於規範申請専利行為的若干規定」に改正
非正常専利出願行為について補足・改善
非正常専利出願の審査手順を明確に規定
非正常専利出願行為に対する処理に関する関連処理措置を更新・整備

「情状が深刻である出願人に対しては、専利費用を軽減せず、追納を要求する上に、状況に応じて本年度から 5 年以内に専利費用を軽減しないことを提案する。」とまで迫っている。

(8)2018年6月15日「关于停征和调整部分专利收费的公告」(第272号)

https://www.cnipa.gov.cn/art/2018/11/30/art_332_42138.html

・特許権が付与された年から6年以内の維持年金補助が10年に延長された。
・実体審査段階に入った特許出願は、最初の審査意見通知の満了前に自主的に取り下げた場合、審査料の50%は返金される場合がある。

(9)2018年11月6日「専利代理条例の改訂」中華人民共和国国務院令 第706号

http://www.gov.cn/zhengce/content/2018-11/19/content_5341736.htm

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20190301r.pdf

https://kyk-ip.com/2019/03/01/%E3%80%90%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%80%91%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%B0%82%E5%88%A9%E4%BB%A3%E7%90%86%E6%9D%A1%E4%BE%8B%E3%82%922019%E5%B9%B43%E6%9C%881%E6%97%A5%E6%96%BD%E8%A1%8C%EF%BC%882018%E5%B9%B411/

非正常専利出願をなくすためには代理人の役割も重要な観点から専利代理条例を改訂。

(10)2019年6月28日「关于调整专利收费减缴条件和商标注册收费标准的公告」

http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2019-12/09/content_5459661.htm

助成を享受できるのは者の条件が引き上げられた。
・前年の平均月収が5,000元(年間60,000元)未満の個人
・前年に課税所得が100万元未満の企業
・公的機関、社会団体、非営利の科学研究機関

(11)2021年1月27日「国家知识产权局关于进一步严格规范专利申请行为的通知」

https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/1/27/art_545_156433.html?xxgkhide=1

「専利出願行為の更なる厳格な規範化に関する国家知識産権局の通知」(JETRO訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20210127.pdf

非正常出願行為への対応などが示され、「専利出願件数統計から非正常出願の件数を差引く」ことなども示されている。
非正常出願に関しては、情状に応じて助成費用の返納が求められることとなった。
イノベーションの保護を目的としない非正常特許出願行為を排除するため、2021年6月末までに、特許出願時の助成を全面的に廃止し、登録時の補助金は2025年までに全面的に廃止するよう指摘している。
2021 年末までに専利出願秩序が更に規範化され、非正常出願が明らかに減少し、高品質の専利出願の比率が継続的に向上するよう努力する、ともされている。

対象となる非正常特許出願行為として、以下のような類型を例示している。

1)「特許出願行為の規範化に関する若干の規定」(国家知識産権局第75号局令)第3条に規定する6種類;

(a)同一の出願人による内容が明らかに同一の複数の出願、或いは他人にそれをさせた場合;
(b)同一の出願人による明らかに先の技術或いは意匠の出願を剽窃した複数の出願、或いは他人にそれをさせた場合;
(c)同一の出願人による異なる材料、成分、配合比、部品などを簡単に代替或いは足した複数の出願;
(d)同一の出願人による実験データ或いは技術的効果が明らかに捏造された複数の出願;
(e)同一の出願人によるコンピュータ技術などを用いてランダムに製品形状、パターン或いは色を生成させた複数の出願;
(f)他人或いは特許代理人の支援を受けた上記(a)から(e)の出願。

2)出願人が故意に関連する特許出願を分散させて行った出願。

3)出願人がその研究開発能力と明らかに矛盾した出願。

4)出願人による異常な転売のある出願。

5)出願人による特許出願で、複雑な構造で簡単な機能を実現する技術、従来の或いは簡単な特徴を組合せ或いは積み重ねるなど明らかに技術改良の常識から外れた技術であるもの。

6)その他、民法典に規定する信義誠実の原則に違反、特許法関連規定に合わない特許出願管理秩序を乱す行為による出願。

(12)2021年3月11日「国家知识产权局发布《关于规范申请专利行为的办法》的公告」(第411号)

https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/3/12/art_74_157677.html

1月27日の通知が弁法として公告された。

「専利出願行為の規範化に関する弁法」施行
https://kyk-ip.com/2021/03/13/%E3%80%90%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%80%91%E3%80%8C%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%87%BA%E9%A1%98%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AE%E8%A6%8F%E7%AF%84%E5%8C%96%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BC%81%E6%B3%95%E3%80%8D/

(13)2021年5月6日「専利出願行為の規範化に関する若干の規定の改正草案(意見募集稿)」

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20210506_kisou_jp.pdf

https://kyk-ip.com/2021/05/07/%E3%80%90%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%80%91%E3%80%8C%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%87%BA%E9%A1%98%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AE%E8%A6%8F%E7%AF%84%E5%8C%96%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%8B%A5%E5%B9%B2%E3%81%AE/

(14)2021年8月23日 違法行為のあった特許代理事務所等を処分

https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/8/23/art_53_169607.html

https://kyk-ip.com/2021/08/24/%e3%80%90%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%80%91%e9%81%95%e6%b3%95%e3%81%ae%e7%89%b9%e8%a8%b1%e4%bb%a3%e7%90%86%e4%ba%ba%e4%ba%8b%e5%8b%99%e6%89%80%e3%82%92%e5%87%a6%e5%88%86%ef%bc%888%e6%9c%8823%e6%97%a5/

代理事務所69社と個人2名が無資格、無許可で代理業務を行ったとして処分され、事務所名も公告された。
非正常出願を取り扱った、という理由ではない。
これら69社が取扱った出願案件を検索したが、いずれも検出できなかった。

3.出願統計への影響

2021年1月27日「国家知识产权局关于进一步严格规范专利申请行为的通知」で「専利出願件数統計から非正常出願の件数を差引く」などと宣言され、2018年~2019年の出願案件から非正常出願が削除されたとも言われていますが、非正常出願をどのように特定するのか興味あるところです。

一説によると、2018年以降、「コピー出願などの非正常出願をした者は公開になる前に自発取下げすれば懲罰を課さない」とのことから大量の非正常出願が取下げられた、とも囁かれています。出願された特許は公開前であればいつでも取下げられ、公開特許とはならず、その出願情報は我々一般ユーザーにはカウントできません。出願され、公開特許となってデータベースに搭載されたものだけが検索によって把握できるのですが、特許庁では出願受付情報があるので公開前取下げ案件も「出願特許数」としてカウントできますが、そのようなもの(公開前取下げ案件)は「出願数」として発表されていないのかもしれません。
また、少し前に紹介した「中国特許情報の実態」での出願番号の欠落という問題はそのような案件によるものかもしれません。
https://sasiapi.org/2021/02/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e7%89%b9%e8%a8%b1%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%ae%9f%e6%85%8b/

図1.中国専利出願推移(CNIPA統計資料を基にグラフ化)

中国特許庁が発表している2000年以降の出願推移を見てみると(図1)、確かに2019年、2020年の出願数は減少している。この減少分が非正常出願取下げによるものかどうかは確認しようもない。他方、実用新案はそのほとんどが1年以内に登録となるために「登録前に取下げ」というアクションが間に合わなかったのであろうか、出願数の伸びに特許のような変化は見られない。
次節で非正常出願例を紹介するように、いわゆる「コピー出願」とされるものの多くは実用新案ですが、今後、特許と同様に実用新案の伸びも抑制されるのであろうか、注視したいところである。

4.非正常出願の実例(主として2012年ワーキングデータを基にしたコピー出願について)

もちろん、特実同日出願や改良発明などはコピー出願とは捉えていませんが、図2に示したように発明の名称、要約(摘要)、請求の範囲などがほとんど同一で出願人だけが違う後願特許、実案をコピー出願と捉えました。本件出願人(潘戈)のこの案件(CN200420023657.1)では、特実同日出願として特許(CN200410025108.2)も出願され、特許は2010年5月5日に登録になっていますが、実案は2010年5月5日に重複授権放棄(避免重复授权放弃)での失効ではなく、「2014.08.06 专利权的终止」で失効となっています。
また、コピー出願のCN201020614376.9(周晓刚)は、2011年7月6日に登録となり、2014年12月31日に「专利权的终止」で失効となっています。

図2.2014年~2017年JIPA中国特許調査テキストより

上記例以外にも周晓刚氏は「多功能太阳能光伏电池光热装置」CN201020611990.X(出願日2010/11/10)として王文阁氏の実案CN200620148052.4(出願日2006/10/23)をコピーした出願など数件のコピー出願をしています。

先願CN200620148052.4(出願日2006/10/23)の請求の範囲
1、一种多功能太阳能光伏电池光热装置,包括机体、设置在机体中的光电 装置和光热装置,其特征在于所述的机体由隔板分成上、下两部分,所述光电 装置固定设置在隔板上部,光热装置的热能交换器固定设置在隔板下部,其中 光电装置的光伏芯片设置为水波纹形,由其上层设置的增光反射体和下层设置 的光热导体固定,所述增光反射体和光热导体为固态透明体,该透明体内设有 反光、射光纳米材料。
2、根据权利要求1所述的一种多功能太阳能光伏电池光热装置,其特征在于,所述光电装置中设置的电源线路,与电网或者用电设备连接。
3、根据权利要求1所述的一种多功能太阳能光伏电池光热装置,其特征在于,在热能交换器的两端分别设置进、出水管。

後願CN201020611990.X(出願日2010/11/10)の請求の範囲
1.一种多功能太阳能光伏电池光热装置,包括机体(1)、设置在机体中的光电装置和光热装置,其特征在于,所述的机体(1)由隔板(9)分成上、下两部分,所述光电装置固定设置在隔板上部,光热装置的热能交换器(6)固定设置在隔板下部,其中光电装置的光伏芯片(3)设置为水波纹形,由其上层设置的增光反射体(4)和下层设置的光热导体(7)固定,所述增光反射体(4)和光热导体(7)为固态透明体,该透明体内设有反光、射光纳米材料。
2.根据权利要求1所述的一种多功能太阳能光伏电池光热装置,其特征在于,所述光电装置中设置的电源线路(8),与电网或者用电设备连接。
3.根据权利要求1所述的一种多功能太阳能光伏电池光热装置,其特征在于,在热能交换器(6)的两端分别设置进、出水管。

先願の請求の範囲の文言「包括机体」を「包括机体(1)」のように構成部に数字を付しただけの変更です。他の出願人においても2012年時点でこのようなコピー出願例は40数件確認しています。さらにこれらコピー出願を扱う代理人も同一代理事務所が複数の案件で関わっていることも確認しています。
出願人にとっては、出願費用や登録費用(維持年金)もタダ同然で出願でき、代理事務所も処理案件が増えれば手数料収入も増えることになって、どちらも大した出費もなく、いわばWinWinの関係である。出願助成制度を悪用した、まるで詐欺行為と紹介してきた。

このような、いわゆるコピー出願については2014年以降の中国特許調査各種セミナーで紹介してきたが、最近では特許、実案とも急激に出願数も増えており、コピー出願数も相当あるとのことから再度、同様の事例を収集し、整理したいと思う。

さらに、2012年のワーキングでは同日出願として、特許2件、実案1件および特許1件、実案2件の表1のような(当時は「三重出願」と呼称)請求の範囲が同一の出願も存在する。同一出願人によるコピー出願というべきものである。
2021年1月27日の通知(前記(11))でも示されているような「異なる材料、成分、配合比、部品などを簡単に代替」や請求の範囲が簡易に1行で記載されているいるような「非正常出願」例を挙げれば、さらに多くの実例が見つかるものと思われる。

表1.三重出願例

5.あとがき

先願と同一または、ほぼ同一の内容の出願があることを2012年の「特実同日出願」の検証中に見つけ、その年のワーキング成果として報告し、2014年~2017年の各種セミナーでもコラム的に紹介してきました。
特実同日出願や分割出願でもないこのような出願に、当初は、「こんなことが許されるのか」「指導や取り締まりでの罰則はないのか」など憤りに似た驚きを覚えたことを思い出しました。しかし、最近の中国特許庁の出願状況の危惧と取り締まりが実施されることを知り、納得した次第です。

研究者が先行文献をろくに把握せずに、悪意なく、権利的には既に自社から出願した内容に重複する出願をすることもたまにあります。
以前から論文の引用と盗用も問題になっており、最近ではAIを活用し、そのような不正な論文を抽出することが行われているらしいのですが、特許情報の分野でも既にAIによる非正常出願の抽出(選別)が行われているのかもしれません。

6.その他の関連情報

1)「中国における特許補助政策と特許の質」李 春霞(専修大学大学院経済学研究科博士後期課程論文 2015年)
https://core.ac.uk/download/pdf/83120773.pdf

2)「中国における特許の質向上に関する取り組み」(創英国際 山口 2017/11/6)
https://www.soei.com/blog/2017/11/06/%EF%BC%BB%E7%89%B9%E8%A8%B1%EF%BC%8F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%EF%BC%BD%EF%BC%9C%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0%EF%BC%9E%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%81%AE%E8%B3%AA/

3)「中国における政府による知的財産に関する各種優遇・支援制度」(北京銀龍 杜 嘉璐 2019)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2019/05/7e3ee6f823d930178e2bff59f0e7729b.pdf

4)「日本と中国における特許出願への助成制度の比較」(涌井 謙一 2020/2/29)

https://spc.jst.go.jp/experiences/howdojp/howdojp_2001.html

5) 「特許出願補助金の廃止と質への転換」(KyK-IP 相澤 2021/1/29)

https://note.com/kykip/n/nadc502d53d02

コピー出願ではなく、以下のケースが「非正常出願」として処分対象になっている。
・特許において具体的な組成、配合比による原理作用や技術効果を示す実験例が記載されていないので処分
・技術解決手段が簡単で、その内の89件の請求項が一行で記載されているので処分

6) 「特許出願の件数の追及から品質の向上への転換を推進」  [名古屋国際特許業務法人](2021/2/9)

https://www.patent.gr.jp/news/shosai.html?id=932135357601cf9f7dfc68

7)その他

・中华人民共和国专利法(2008年修正、2009年施行)・・専利法第3次改正
https://www.cnipa.gov.cn/art/2015/9/2/art_97_28193.html

「中国第 4 次改正専利法の解説」(河野 2020/10/20)
https://knpt.com/contents/china_news/2020.10.20.pdf

・「専利審査指南」の改正に関する国家知識産権局の決定(局公告)第 391 号(2020/12/30)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20210115.pdf

以上