中国特許、実用新案の分割出願

2021年3月20日
アジア特許情報研究会:伊藤徹男

2021年2月の検索Tips「中国特許情報の実態」の中国公開特許の推移で「遅延公開特許」として紹介したように、出願から5,6年経過しても、さらには15年以上経過してもなお公開されるものがあり、これらの遅延公開特許のほとんどは分割出願であることもわかりました。(参考①)
特許にしても実用新案にしても分割までして権利化しようというからには重要な権利に違いありません。そこで「中国特許情報の実態」で考察できなかった中国特許の分割出願について少し調べてみました。

1.分割出願数推移

まず、2000年以降の分割出願についてその推移を見てみました。現時点(2021/3)でも2006年出願分の公開(登録)の発行が継続していますので(出願公開・登録が完結していない)、2007年以降のデータも更新のたびにわずかですが情報が変化することになります。

表1.特許・実用新案分割案件の推移

表1では、有効分割特許・実案の維持率について紹介していますが、その定義は「登録分割特許に対する有効特許・実案(年金が支払われて生きているもの)を示しています。例えば、2001年出願の分割特許3584件が2302件登録になり、現在871件有効であるので、その維持率は登録分割特許に対し、38%ということです。また、分割出願までしたのに登録にならなかった(できなかった)特許が1282件もあることになります。知財出願担当であれば包袋などからその理由も突き詰めたいところでしょう。
2000年出願特許は20年の有効期限を徒過しており、現時点で有効なものは0件のはずですがデータベースの処理上(専利権終止、年金未納など失効情報欠落のため)、極めてわずかですが生きていることになっています。

2.出願人、分野別(IPC)推移

分割出願の推移だけを見ても得られるものは少ないと思いますので、次に出願人の動向を見てみました。2000年以降2019年出願分の各年TOP5出願人を表2に示した。さらに5年単位の出願人TOP10を表3に、IPC TOP10を表4に示した。それぞれ括弧内の数字は分割出願数です。表2~表4はいずれも特許です。

表2.出願各年の分割出願TOP5出願人

中国版CNIPRやPATENTSCOPEには検索集合から出願人その他の情報を簡易解析する機能が備わっており、簡単に出願人ランキングなどを表示できますが、これまでにも指摘したように 1), 2)、このような簡易解析ツールでは出願人などの名寄せはされません。データベースに収録された出願人名をそのまま正確に(名寄せせずに)ランキング解析して抽出しますので注意が必要です。
例えば、中国版CNIPR では2000年分割出願上位に索尼公司(SONY CORP)が57件と表示されますが、SONY CORPとしては、索尼株式会社, 索尼电脑, 索尼计算机などの異表記もありますので名寄せをしてカウントすると80件となります。

表2、表3では法人格を除いて表記していますが、原則、本体のみの分割出願数を示しています。「华为技术」では「华为技术服务」や「华为技术软件」などの関連会社も抽出してしまいますので本体のみを抽出するには「华为技术有限公司」とします。英語表記では「HUAWEI TECHNOLOGIES」ですが、「HUAWEI TECHNOLOGY」では「华卫科技」や「华微科技」などのノイズも混入します。

表3.5年単位の分割出願TOP10出願人

2014年分割出願までは华为技术有限公司、邱则有氏、戴梦云氏を除き、ほとんど外国出願人です。2004年以降、中国出願件数TOPを維持してきた华为技术有限公司の分割出願数も多いのが印象的。2015年以降の分割出願は出願から日も浅いのでランキングは今後大きく変わることが予想されます。

表3において「OPPO」とあるのは、社名変更により2018年まで「广东欧珀移动通信」として、2016年以降は「OPPO广东移动通信」として出願している中国大手通信会社です。

表3と同様、5年ごとに区切った分野別IPCを表4に示しました。分割出願数の比較的多い分野の出願人のランキングも示しました。また、中国語表記ではわかりにくい外国出願人については英表記も付しました。

表4.5年単位の分割出願TOP10 IPC

2000年以降の出願人、IPCを概観すると電気・通信関係分野の出願が多いと言えるでしょう。2)以下には2000~2019年を通じた各分野の分割出願TOP5出願人を示した。

1) E04(建築)は建設会社の社長でもある邱则有氏の出願によるものです。(参考③)

2) A61P(化合物または医薬製剤の特殊な治療活性)は全年代にわたってかなりの分割出願数となっていますが、突出した出願(分割)をしている出願人はいません。
・诺瓦提斯 (277) ・・NOVARTIS(誤表記含め11種の異表記)
・霍夫曼-拉罗奇(173) ・・HOFFMANN LA ROCHE(誤表記含め31種の異表記)
・大塚制药(88)

3) G06F(デジタルデータ処理)
・英特尔(647) ・・INTEL
・苹果(638) ・・APPLE INC
・三星电子(528)
・华为技术(317) ・・HUAWEI TECHNOLOGIES
・北京奇虎科技(268) ・・BEIJING QIHOO TECHNOLOGY

4) H04L(デジタル情報伝送)
・华为技术(1733)
・高通(849) ・・QUALCOMM INCORPORATED(6種の異表記)
・三星电子(668)
・LG电子(330)
・英特尔(310)

5) H04N(画像通信)
・三星电子(831)
・索尼(639) ・・SONY CORPORATION
・佳能(512)  ・・CANON KABUSHIKI KAISHA
・松下电器产业(420)
・夏普(279)  ・・SHARP KABUSHIKI KAISHA

6) H04W(無線通信ネットワーク)
・华为技术(1923)
・高通(1067)
・三星电子(466)
・OPPO广东移动通信(432)
・日本电气(286)

実用新案についても同様に見ておきましょう。

表5.2011-2020年実用新案分割出願/出願人・IPC TOP10

3.分割出願維持率等

2000~2020年に出願された分割出願について分割以外の通常出願との対比を分野を問わず、分割特許TOP20出願人を表6に、分割実用新案TOP10出願人を表7に示しました。ここでも5年毎などに区切れば最近の動向なども把握できるかと思いますが参考情報として見ていただければ幸いです。2021年3月現在の有効分割出願数でランキングしました。

分割までして出願した(重要な)特許・実用新案なので全出願より維持率が高いと予想しましたが、特許はわずかに分割の維持率が高い程度ですが、実用新案は予想通り高めの維持率ではないかと思います。

表6.分割出願TOP 20(特許)

維持率:登録特許に対する有効(生きている)特許
分割率:全出願に対する分割特許

表7.分割出願TOP 10(実用新案)

いずれも2021/3/20現在の情報であり、出願年基準のデータなのでデータが更新されるたびにいくらか変化するので時間経過して見る時には改めて最新情報を取得するなどした方がいいでしょう。

参考①:遅延公開特許推移

参考②:遅延登録実用新案推移

参考③:「邱则有」氏の出願推移(横軸:公報発行年)

参照文献

1) 中国特許統計データを読む際の留意点
2) PATENTSCOPEによる中国特許調査

以上