台湾特許国別出願推移

2021/2/28

アジア特許情報研究会:伊藤徹男

1.はじめに

台湾特許は中国特許ほど注目されていないようですが、最近では「自動車用半導体が不足して各社とも製造ラインの稼働率が下がっている」というような、あるいは、そのあおりを受けて「台湾半導体メーカーはフル生産」ということがニュースになるほど現在の日本の半導体産業は台湾に大きく依存しているようです。このような状況の少し前から台湾特許出願でも半導体メーカーからの出願が伸びています。

台湾産業政策上、特に製造業においては輸出に依存してきた経緯もあり、古くから外資を受け入れ、特許出願も内国からの出願より外国出願人の方が多い(中でも日本からの出願比率も高い)という特異な状況となっています。

そこで本稿では、台湾の特許出願状況を紹介すると共に内外国出願の推移を見てみることにします。内外国出願においては、さらに主要国別の出願数をデータベースから抽出する方法を、その問題点と共に紹介します。

そこでは台湾特許庁が運営する2つのデータベース、1つは当初から存在する「中華民國專利資訊檢索系統(以下、TWPATと略)」、2つ目は、最近、台湾特許庁からリリースされた「全球專利檢索系統(Global Patent Search System(以下、GPSSと略))」のそれぞれから国籍別の出願を把握する方法を紹介します。GPSSでは台湾特許だけでなく、日本、韓国、中国や欧米特許なども検索できるワールドワイドなデータベースとなっていますが、台湾特許の審査経過情報などはTWPATにリンクされ、こちらで確認することになります1)

2.台湾特許出願推移

一般に出願推移という場合には出願年を基準に当該年に何件出願されたかを把握しますが、出願年を基準にしてデータ取得すると公開特許数も登録公報数もデータが更新されるたびにその数値が変化します。公知日基準では公開特許数は変化しませんが、登録公報数は審査を経て登録となりますので収録データが更新されるたびに変化します。

データベースの収録データを確認するときには、「いつ取得したデータ」であるかを念頭に議論する必要があります。個人的には、出願年基準では直近の数年のデータが大きく落ち込んで表示されることになり違和感があるのと(出願が落ち込んでいる状況に見える)、データが日々(データ更新のたびに)変化するので発行年基準のデータの方が好きです。

ちなみに台湾特許のデータ更新日は以下となっています。
公開特許:毎月1日、16日
公告特許、実用新案、意匠:毎月1日、11日、21日

表1に2021年2月28日現在の出願年基準および表2に発行年基準の台湾特許の推移を示しました。このデータも明日(3月1日)には更新され陳腐化することになります。

図1.出願年推移

図2.発行年推移

さらに表3には、台湾公開特許の出願人ランキングTOP10を示しました。

表1.台湾公開特許の推移

かつては年間3,000件以上もの出願をして長い間TOPの座を占めていた鴻海精密工業(HON HAI PRECISION)も2020年公開では207件となり20位以下となっています。

表3にも一部表れているように台湾における日本や米国からの出願は従来から高い比率を占めています。そこで台湾における国別推移を見てみましょう。まずは内外国出願推移です。

3.内外国出願推移

図3.内外国公開特許

図4.内外国公告特許

新興国の特許出願のように、公開、公告ともほぼ外国出願人の出願が内国出願人を上回っていますが、この状況は最近でも同様で、産業政策上の理由によるものです。

このような内外国の出願数の算出はTWPATの出願人フィールドにある国名と国コードから求めることができます。

TWPATの出願フィールドには原則、以下の情報が収録されています。 ・内国出願人
2009年9月発行以前(中国語出願人名+英訳出願人名+所在地名)
2009年10月発行以降(中国語出願人名+英訳出願人名+所在地名+国コードTW)
・外国出願人
2009年9月発行以前(中国語出願人名+英訳出願人名+国名)
2009年10月発行以降(中国語出願人名+英訳出願人名+国名+国コード)
いずれも個人出願人の場合には英訳出願人名は省略されることもあります。

「外国出願人の抽出」
2009年9月発行以前は国名で、2009年10月発行以降は国コードが付与されましたので「国名または国コード」でということでよさそうですが、以下のような問題もあり、一筋縄ではいきません。

外国出願人抽出用の国コードと国名は以下のものが使われていますが、後ほど紹介するように国コードだけ、国名だけの抽出には問題もあります。特に国コードが付与された2009年10月発行以降の国名ではノイズも発生するようになりました。

外国出願人の国コードと国名
「CN or 中國 or 大陸商 or AE or 阿拉伯 or AG or 安地卡及巴布達 or AI or 英屬安圭拉 or AN or 安地列斯 or 英屬安圭拉 or AT or 奧地利 or AU or 澳大利亞 or 澳洲 or BB or 巴貝多 or BE or 比利時 or BG or 保加利亞 or BM or 百慕達 or BN or 汶萊 or BR or 巴西 or BS or 巴哈馬 or BY or 白俄羅斯 or BZ or 貝里斯 or CA or 加拿大 or CH or 瑞士 or CL or 智利 or CO or 哥倫比亞 or CR or 哥斯大黎加 or 英國沙雷 or CU or 古巴 or CY or 賽普勒斯 or 塞普勒斯 or CZ or 捷克 or DE or 德國 or 西德 or DK or 丹麥 or DO or 多明尼加 or EG or 埃及 or ES or 西班牙 or FI or 芬蘭 or FR or 法國 or GB or 英國 or 英格蘭 or 蘇格蘭 or GI or 直布羅陀 or GR or 希臘 or HK or 香港 or HR or 克羅埃西亞 or HU or 匈牙利 or ID or 印度尼西亞 or 印尼 or 印尼巴丹島 or IE or 愛爾蘭 or IL or 以色列 or IM or 曼島 or 曼群島 or IN or 印度 or IR or 伊朗 or IS or 冰島 or IT or 義大利 or JE or 澤西 or JO or 約旦 or JP or 日本 or KE or 肯亞 or KR or 韓國 or 南韓 or 大韓民國 or KY or 開曼群島 or 蓋曼群島 or KW or 科威特 or KZ or 哈薩克 or LB or 黎巴嫩 or LI or 列支敦斯登 or 列支敦斯敦 or 列支敦士登 or LK or 斯里蘭卡 or LT or 立陶宛 or LU or 盧森堡 or 盧森保 or LV or 拉脫維亞 or MA or 摩洛哥 or 摩納哥 or MH or 馬紹爾群島 or MY or 馬來西亞 or MO or 澳門 or MT or 馬爾他 or MU or 模里西斯 or MX or 墨西哥 or NL or 荷蘭 or NO or 挪威 or NP or 尼泊爾 or NZ or 紐西蘭 or OM or 阿曼 or 奧曼群島 or PA or 巴拿馬 or PH or 菲律賓 or PK or 巴基斯坦 or PL or 波蘭 or PR or 波多黎各 or PT or 葡萄牙 or RU or 俄羅斯 or 俄國 or 蘇俄 or SA or 沙烏地阿拉伯 or SC or 塞席爾 or SE or 瑞典 or SG or 新加坡 or SI or 斯洛維尼亞 or 斯拉維尼亞 or SK or 斯洛伐克 or SY or 敘利亞 or TH or 泰國 or TR or 土耳其 or TT or 千里達巴杜 or UA or 烏克蘭 or US or 美國 or 美商 or UY or 烏拉圭 or VE or 委內瑞拉 or VG or 維爾京群島 or 維爾京群商 or 維京群島 or 處女島 or VN or 越南 or VU or 瓦奴阿吐 or WS or 薩摩亞 or ZA or 南非」

外国出願人の国名には、例えば韓国の場合、「韓國 or南韓 or大韓民國」のような表記ゆれ(異表記)もあります。
・LG菲利普液晶顯示股份有限公司 LG. PHILIPS LCD 韓國
・三星電子股份有限公司 SAMSUNG ELECTRONICS 南韓
・現代電子產業股份有限公司 HYUNDAI ELECTRONICS INDUSTRIES 大韓民國

ややこしいことに国名コードが付与されるようになってからは以下のようなノイズともとれるような表記もありますので、2009年10月発行以降は「国名 and 国コード」で検索した方がいいでしょう。

(美國 not US)@paで得られる国名の付与ミス
・耐基創新公司 NIKE INNOVATE C. V. 美國 NL
・荷蘭商耐克創新有限合夥公司 NIKE INNOVATE C.V. 美國 NL
・愛爾蘭商亞德諾半導體環球公司 ANALOG DEVICES GLOBAL 美國 IE
・開曼群島商芯凱電子科技公司 KINETIC TECHNOLOGIES 美國 KY
・石井猛 ISHII, TAKESHI 美國 JP
どうしてこのような誤った国名が付与されてしまうのかは不明です。

これらは国名としての「美國」ではなく、国コードの方が正しいことが多いようです。国名の付与ミスを排除するためには国公立機関や個人以外の企業名の冒頭に「荷蘭商」「愛爾蘭商」「開曼群島商」のように「○○商」と付与された出願人名がありますのでこれらを「荷蘭商 and NL」として除けばノイズも少なくなります。
その他、US:美商、JP:日商、KR:韓商 or 南韓商、KY:開曼群島商 or 蓋曼群島商、DE:德商などですが、網羅して紹介するのは割愛します。

また、国コードのつもりで「AU, CA, DE, HU, ID, IS, LI, LU, PT, TH」などを使うと、例えば「DE」では出願人フィールドの出願人英表記中に国コードが含まれることもあります。「US and美國」とすれば米国出願人を抽出できます。
・美商杜邦股份有限公司 E. I. DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY 美國 US
何だかややこしくなってきました

「内国出願人の抽出」
「ID=2020 not (外国出願人国コードまたは国名)」とすれば内国出願人が抽出できます。台湾内国出願人の場合、特に2009年9月発行以前は国コードや国名ではなく、出願人所在地が表示されていますので以下のような「出願人所在地」から検索できます。2009年10月発行以降の内国出願は国コードTWでほぼ問題なく検索できるようになりました。

「中華民國 or 臺北縣 or 臺北市 or 台北縣 or 台北巿 or 新店市 or 新店巿 or 新莊市 or 新莊巿 or 三重市 or 三重巿 or 基隆市 or 基隆路 or 新北市 or 新北巿 or 桃園 or 中壢巿 or 新竹縣 or 新竹市 or 新竹工業區 or 竹北市 or 竹北巿 or 苗栗縣 or 苗栗縣 or 苗栗市 or 宜蘭縣 or 宜蘭市 or 宜蘭巿 or 臺中縣 or 臺中市 or 台中 or 彰化縣 or 彰化市 or 彰化巿 or 南投縣 or 南投市 or 南投巿 or 花蓮縣 or 花蓮市 or 花蓮巿 or 雲林縣 or 嘉義縣 or 嘉義市 or 臺南縣 or 臺南市 or 台南縣 or 新營市 or 新營巿 or 高雄 or 屏東縣 or 屏東市 or 屏東巿 or 臺東縣 or 臺東市 or 台東市 or 澎湖縣 or 連江縣 or 金門縣 or 台灣大學 or 臺灣大學 or 科學園區 or 科技園區 or 科技工業園區 or 工業園區」

「新店市 or 新店巿」など一部重複しているのでは?、と指摘される方がいるかもしれません。いずれも重複なく抽出されます。「市と巿」両方の表記が存在します。「巿」は以前に中国(大陸)調査で紹介した旧体字なのかもしれません。「苗栗縣 or 苗栗縣」の「栗 と栗」も同様です。

個人出願人に対しては以下のように内国人と思われる出願人に外国国名が付与されていることなども若干存在します。個人出願人の出願比率は中国大陸特許に比べると低いのですが、わずかに存在します。参考情報として台湾個人出願人の出願比率を「法人・個人」として別表図に紹介しました。
陳家成 CHEN, CHIA CHERN TW
葉欣 YEH, HSIN 馬來西亞 TW
陳志泰 CHEN, JR TAI 瑞典 TW
江品輝 CHIANG, PIN HUI 日本 TW
陳建宏 CHEN, CHIEN HUNG 美國 TW

内国出願人の検証
1)((TW)@pa and ID=200910:2020) AND (IX=AA) 229832件(国コードのみ)
2)(TW and 所在地)@pa and ID=200910:2020) AND (IX=AA) 2296760件
3)(所在地)@pa and ID=200910:2020) AND (IX=AA) 231559件(所在地のみ)
4)(TW not 所在地)@pa and ID=200910:2020) AND (IX=AA) 162件 5)(所在地 not TW)@pa and ID=200910:2020) AND (IX=AA) 1889件

4)では、所在地表記のない個人出願人や「林信湧 LIN, HSIN YUNG 中國大陸 TW」など国名と国コードの不一致のノイズなど。
5)では、「英屬開曼群島商麥迪創科技股份有限公司 臺北市文山區羅斯福路6段218號7樓 KY」など外国出願人でも台湾国内の所在地が表記されているもの、つまり、3)の「所在地」だけでは外国出願人も抽出してしまいます。

したがって、2009年10月以降発行(国コードが付与されている)の内国出願人は「TW and 所在地」で検索すればいいのですが、外国出願人が内国所在地であったり、誤った国コードが付与された個人出願人などのノイズも混入します。

上記のようなことを留意して内外国出願推移を抽出します。商用データベースの場合には、こんなバカみたいなことをしなくてももっと簡単に抽出できるコードがあるのかもしれませんが、そのようなコードで正しく分別できるかどうか検証したいものです。

因みに、もう1つのデータベースGPSSではどうかもついでにみておきましょう。GPSSではTWPATと異なり、発行年2005年でも図5のように国コードも収録されていますので国名と国コードから「(日本 and JP)@PA and ID=2005」のように国籍ごとの収録を確認できます。

図5.GPSS 2005年公開特許(出願人:日本)

GPSSでは2009年発行前後に拘わらず内国出願人の所在地は表示されません。また、「耐基創新公司 (美國); NIKE INNOVATE C. V. (NL)」のような国名付与のミスなどもTWPAT同様です。

4.国別出願推移

台湾の公開特許と公告特許について台湾、中国(大陸)、日本、米国、EUについての国別出願数をGPSSで抽出し、その推移を図6、図7に示しました。ここでも発行日基準での推移です。

図6.公開特許の各国出願推移

公開年

図7.公告特許の各国公開推移

公告年

予備検索としてTWPATとGPSSで台湾と米国の収録数を確認しました(表2)。台湾は「TW」、米国は「美國 and US」としました。
もちろん、TWPATで2009年以前発行分については台湾内国出願人を「TW所在地」、米国出願人を「美國」とすればそれなりにGPSSに近い収録数が得られますが、上記したようにノイズが混入するので不正確な情報となります。

表2.TWPATとGPSSの収録比較(予備検索)

図6、図7で比較した国と検索式は以下です。
・台湾内国出願人による出願「TW」
・中国大陸出願人「CN and (中國 or 大陸商)」
・日本出願人「JP and (日本 or 日商)」
・米国「US and (美國 or 美商)」
・韓国「KR and (韓國 or 韓商 or 南韓 or 南韓商 or 大韓民國)」
・EU「(AT and 奧地利) or (BE and 比利時) or (BG and 保加利亞) or (BY and 白俄羅斯) or (CH and 瑞士) or (CZ and 捷克) or (DE and 德國) or (DK and 丹麥) or (ES and 西班牙) or (FI and 芬蘭) or (FR and 法國) or (GB and (英國 or 英格蘭 or 蘇格蘭)) or (GR and 希臘) or (HR and 克羅埃西亞) or (HU and 匈牙利) or (IE and 愛爾蘭) or (IS and 冰島) or (IT and 義大利) or (LI and (列支敦斯登 or 列支敦斯敦 or 列支敦士登)) or (LT and 立陶宛) or (LU and (盧森堡 or 盧森保)) or (LV and 拉脫維亞) or (NL and 荷蘭) or (NO and 挪威) or (PL and 波蘭) or (PR and 波多黎各) or (PT and 葡萄牙) or (SE and 瑞典) or (SK and 斯洛伐克)」
・その他は公開、公告全特許数から上記5国、1地域をnot演算したもの
(「その他」にはカナダ、オーストラリア、シンガポールなどの他に以下のようなノイズも含まれています。)

図8.「その他」に含まれるノイズ

図6、図7の出願傾向を見てみると、公開、公告いずれも外国からの出願としては日本出願人の割合が高く、次いで米国出願人となっています。中国大陸からの出願も2012年公開以降、徐々に増えています。中でも、ALIBABA(阿里巴巴)やOPPO MOBILE(廣東移動通信)など中国大陸出願で上位に出願ランキングされている企業の台湾出願が増えているのが注目されます。ここ数年でさらに多くの中国大陸出願人(HUAWEI TECHNOLOGIE(華為技術)など)の出願が増えるものと思われます。

別表図1:台湾公開特許における法人・個人

別表図2:台湾公告特許における法人・個人

参照文献
1) 台湾特許庁データベースGlobal Patent Search System(GPSS)

以上