東アジア特許の生死情報(その2.台湾)

2020/9/7
アジア特許情報研究会:伊藤徹男

2.台湾の法律状態情報と生死

台湾の専利権(特許、実用新案、意匠)取得の流れの概略は以下となっています。

特許の場合:
 ・出願と同時または出願から3年以内に審査請求
 ・初審審査
 ・再審審査(初審で拒絶された場合)
 ・訴願請求(再審で拒絶された場合)

審査を経て特許査定となり、登録料および1年目の年金を納付してはじめて公告番号が付与され、特許証が発行されます。(専利法第52条第1項)

登録料(証書料、1年目の年金)は3か月以内に納付しなければならず、徒過した場合、6か月以内に2倍の1年目の年金を支払うことで特許権を回復でき、2年目以降も追納期限の6か月以内に年金を支払わないと特許権は消滅し、その場合は追納期間満了から1年以内に3倍の年金を納付することで特許権を回復できます。

台湾特許情報の法律状態情報は台湾特許庁データベースTWPATから取得します。

1)個別案件の法律状態情報

個々の案件の情報は、検索結果一覧から公報番号をクリックして書誌、要約、図面などが表示される「詳細情報」画面から確認できます(図1)。

詳細情報表示

[図1.詳細情報表示]

「詳細情報」画面上部には「書目資料、詳細説明、専利範囲、雑考資料、状態/権利移動、全部資料」のタブが表示されていますので「状態/権利移動」タブをクリックすると画面下部に図2のような案件状態(審査経過情報)と権利移動(特許有効期間と年金納付状況)が表示されます。

案件状態と権利移動情報

[図2.案件状態と権利移動情報]

2017/7/16には審査請求がなされていなかったもの(待申請實審中)が、2018/9/12には審査請求されて審査中となって、2020/4/13には特許査定(核准)、2020/6/11には年金も納付されて公告番号と登録番号(証書號)が付与されている経緯が確認できます。

年金納付状況は「権利移動」フィールドの右側に納付期限と共に何年間の年金が納付されているかも確認できます。

また、フィールド(表格)検索画面の「MS:雑考資料」に「消滅」と入力して検索すると図3のように検索結果一覧右側に案件状態(審査経過情報)が表示され、公報番号をクリックして「雑考資料」タブを確認すると、年金未納(未依限繳費)などで失効(消滅)していることがわかります。

雑考資料「消滅」の検索結果

[図3.MS:雑考資料「消滅」の検索結果]

「雑考資料」タブの表示

[図4.「雑考資料」タブの表示(左:年金未納で消滅、右:取消で消滅)]

2)検索結果全件の法律状態情報の確認

個別案件は上記のように確認できますが、検索結果のすべて、あるいは大量のSDI情報の年金納付状況(登録特許)はデータをダウンロードすることで確認できます。

年金情報のダウンロード手順(検索結果のダウンロードと同様)

検索結果一覧が表示されたら、検索式の下(結果一覧の上)にあるレコード選択のボタンから、例えば全件を選択する場合には「全選」をクリックします。いずれかのレコードを選択することで画面上部のタブに「資料輸出」(出力)のタブが追加されます。

図5_検索結果一覧

[図5.検索結果一覧]

図5では検索式を基にした検索結果一覧を表示していますが、SDI情報の場合にはウォッチングリストにある出願番号や公報番号を基に検索すれば同様の検索結果一覧が得られます。

「資料輸出」タブをクリックすると、どの形式でダウンロードするか(excel, txt, csv)をプルダウンから選択し、次いでどのフィールドをダウンロードするかをチェックします(図6)。

図6では、出願番号、出願日、公開/公告番号および権利開始日、有効期限日、年金納付期限、年金納付期間(年)の情報を選択したことを示しています。

検索結果情報と共にダウンロードする場合には、国際分類(IPC)、出願人、要約、専利範囲などを適宜選択します。但し、csvでダウンロードする場合には、「優先権」情報は外しておいた方がいいでしょう。優先権情報のないレコードは隣接する左レコードに詰められてしまい、フィールドがずれるので見にくくなってしまいます。

最後に一番下にある「執行輸出」ボタンをクリックすることでダウンロードが実行されます。2017年までは一度に300件までしかダウンロードできませんでしたが、2018年以降は1000件までダウンロードできるようになりました。

仮に5000件の全件をダウンロードしたい、という場合には検索結果を1000件以内になるように分割すれば6回か7回のダウンロードで可能です。

ダウンロード項目指定画面

[図6.ダウンロード項目指定画面]

このようにして得られたSDIダウンロードデータの一例を表1に示します。2020年9月時点で以下のように分類してみました。

  1. 年金納付期限が迫っているもの
  2. 追納で復活が可能なもの
  3. 失効したもの(ウォッチングリストから別リストに移動)

[表1.年金情報ダウンロードデータ]

表1_年金情報ダウンロードデータ

年金管理は国内または国外(ここでは台湾)の特許事務所に依頼していることが多いと思われますが、年金納付期限の1年ぐらい前には、該当案件について年金納付して権利維持するかどうかを判断し、指示しておくとよいでしょう。事務所のミスで「追納期間を徒過して失効してしまった」ということのないよう社内でもクロスチェックが必要。

追納で復活が可能なものは、自社案件であれば早急に追納するかどうか判断し、他社案件であれば追納して復活されるかどうかウォッチングすることになります。

他社案件の場合には、赤枠(およそ1年前)ぐらいの日付では追納手続きをしているかもしれないので、「失効したもの」としてウォッチングリストから除外するのは早計かもしれない。1年以上経過するまで様子を見るとよいでしょう。

3)案件状態データベースによるSDI情報の審査経過状況確認

SDI情報のように大量のデータの審査経過状況を確認するには「案件状態データベース」を利用します。検索画面上部右から3つ目の「案件状態」タブをクリックすると図7の案件状態検索画面が開きます。

図7_案権状態データベース

[図7.案件状態データベース]

「輸入申請號」に出願番号を入力して検索します。出願番号のみで最大147件まで入力可能です。148件以上入力してもエラーとならず147件までの結果が表示されます。

「案件状態」ボックスのプルダウンで「初審核准」(初審で特許査定にったもの)など特定の審査経過情報だけ抽出することもできますが、実務での使い道はなさそう。

[表2.検索結果]

検索結果

147件の出願番号を基に検索しても検索結果は「580件」などと表示されます。デフォルトではほぼ最終の審査経過情報が先に示され、その下に同一案件の審査請求以降の経過情報が表示されます。

表2は出願番号でソートしたもので、どのような経緯で登録に至っているか、拒絶などを受けて再審査中かどうか、あるいは審査未請求で失効しているか(未申請實體審查)などがわかります。147件の案件の経緯などが展開されて580件の情報が示されている、ということになります。

[表3.審査経過状況の表示]

審査経過情報の表示

4)案件状態別検索機能

昨年2019年にTWPAT検索画面上部に6種の審査経過情報から検索できる機能が追加されました(図8)。「案件状態:核准/撤銷/消滅/未審查・公開/核駁/結案」

これらにはそれぞれコマンド検索用のコードが付与されています。コード順に並べると以下のようなものです。
(LS=01*)核准(認容)・・初審核准、再審核准 ⇒ 年金納付することで登録
(LS=02*)未審查/公開・・公開され、未審査請求、審査中(再審を含む)、審査後失効
(LS=03*)核駁(拒絶)・・初審核駁、再審核駁
(LS=04*)結案(出願取下、国内優先権の主張、未審査請求などで終了した案件)
(LS=05*)撤銷(取消)・・審判などによる専利権の取消
(LS=06*)消滅(消滅)・・年金未納などで失効

図8_案件状態別検索機能

[図8.案件状態別検索機能]

これらは案件状態データベースで「案件状態」別に出力したものと同様であると考えられますが、案件状態データベースでは出願番号のみからの検索であるのに対し、検索画面からのものは、発明の名称、要約、請求の範囲、IPC、出願人など各種の検索条件と組み合わせて案件状態別に出力できるところにメリットがあります。

「核准」で登録になっているものに絞って各種検索条件で検索したとしても、初審で特許査定になったものか、再審で特許査定になったかまではわかりません。この案件状態の表示は検索結果一覧の右側に表示されます。

また、消滅原因には以下のようなものがありますが、これも単に「消滅」と表示されるだけであり、消滅原因の確認は「雑考資料」タブで確認することになります。

消滅理由:
年金未納(未依限繳費)・・未依線繳費 or 末依限繳費などの表記スペルミスもある。
権利満了(專利權期滿)

さらに、消滅した案件について、「雑考資料:MS」で「消滅」として検索した結果と「案件状態」別で「消滅(LS=06*)」を選択して検索したものでは検索結果に違いがあるので検証してみました。(検証日は2020年9月5日)

雑考資料:消滅
 ①(IC=B32B-027*) AND (消滅)@MS AND (IX=CI) AND (IX=AG) 1325件
案件状態:消滅
 ②(IC=B32B-027*) AND (LS=06*) AND (IX=CI) AND (IX=AG) 1432件
 ② not ①   107件

差分の107件を確認してみると、結果一覧では「消滅」となっていますが(図9)、詳細表示の「雑考資料」タブはグレーとなっており、情報がなく消滅理由が表示されていません。図10の案件も2023年まで年金が支払われているにも拘わらず「消滅」とされている理由は見いだせていません。

ダウンロードしたデータを確認すると、図10の1件を除き、「年費有效日」が2019年12月のものが20件ありました。これらは年金納入期限を過ぎており、「年金未納状態」になっていますが、追納などの手続中であったり、あるいは年金未納データがデータベースに収録されていない状況であるための、いわゆるタイムラグ分かもしれない。

また、專利權止日が2020年9月以降、および以前のもので年費有效日の表示が「(空白)」となっているものが44件、年費有效日が1998年以前のもの18件(これは雑考資料タブに「年金未納」と情報が入っていてもおかしくない)、1983年以前の出願分では年金情報が入っていないもの(空欄)9件などがありました。

差分の結果一覧

[図9.差分の結果一覧(案件状態の表示は「消滅」になっているが)]

状態権利移動タブの状態案件と権利移動

[図10.状態/権利移動」タブの「案件状態」(上)と「権利移動」(下)]

(LS=02*)の「未審查/公開」については、出願して未審査請求のもの、審査中のものなどが抽出されるはずですが、2016年出願以前の公開特許で抽出されるもののほとんどは登録になっているなど、「未審查/公開」の機能と合致していません。もちろん、2017年以降出願分の多くは未登録(公開または審査中)ですが。

まとめ

台湾の特許情報は、登録となった案件の生死情報は、2)で紹介したダウンロードデータの年金期限を基に判断し、出願公開された案件の生死情報は、3)の案件状態データベースで審査請求がされているか、審査中かどうか、あるいは拒絶となって失効しているかどうかなど、審査経過情報を確認する必要があります。

ここでは技術情報の検索方法を紹介するものではないので、公報種別(特許/実案/意匠の別、公開/公告の別)、出願番号を基に公開と公告の重複除去、特許と実案の同日出願案件の抽出、検索結果一覧の画面表示設定などの各種機能の紹介は割愛しました。

審査の流れなどの詳細はINFOPRO2015「中国・台湾特許データベース法律状態情報活用」を参照ください。

次回は、「3.韓国の法律状態情報と生死」について紹介します。

以上